はじめて真木に行ったのはいつだったのか…。監督が5年前くらいと言うので、きっとそうなんだと思います。秋晴れの、素晴らしい紅葉のなかでの1時間半の山道は、気持ちがよかった記憶しかありません。もっとも、同行の若手男性陣が茅を背負うカニさんのような姿を横目に見ながら歩くだけの私だったからかもしれませんが。
1泊2日の短い真木滞在で覚えていることといえば、「こんな立派な茅葺き屋根見たことない!」「これも運んで来たの!?これも人力で…!?」と集落で見るものごとに驚いたこと。手伝った堆肥運びの荷のものすごい重さと、それをやすやすと一輪車で運ぶ小さな身体のクニさんを見て、すげえ…!と思ったこと。晩ごはんの後の1日の仕事報告の時のエノさんの報告が全くわからないのに、当番の人は当然のようにノートに書きつけ、当時真木にいたタイちゃんの「え………っと…………きょ……う…………は…………」のとってもゆっくりな報告がなにごともなく最後まで終えられる、なんとも言えないリズム。
真木を映画に撮ることになって間もない頃、一之瀬カメラマンが冗談交じりに「で、誰が普通の人なの?」と言った時「…ある意味誰も普通じゃないかもしれません」と答えて笑ってしまったことがありました。世話をする人、される人の関係性ではなく、そこにいる誰もが共に暮らすメンバーであること。それぞれにできることをして流れてゆく日々では、“普通”だとかいう枠があっさり意味をなさなくなって、個性たっぷりの面々の人柄が際立ってくる、なんだか感じたことのないすがすがしさ。それが真木の第一印象でした。
(記:制作進行/中植きさら)